能登半島地震被災地における災害医療支援活動への協力について 

令和6年1月1日に発生した石川県能登半島を震源とする地震(能登半島地震)により、特に被害の大きい能登地方では、現在も多くの方々が避難所での生活を余儀なくされています。これを受け、日本薬剤師会から各都道府県薬剤師会に対して被災地への薬剤師派遣要請があり、次のように医療支援活動に参加してきました。 

派遣期間① 第1班:1月15日(月)~1月19日(金)
② 第3班:2月2日(金)~2月6日(火)の5日間 
派遣先珠洲市(石川県珠洲市 健康増進センター臨時調剤所)
派遣メンバー①松木、福島薬剤師会会長 白石 丈也先生、同副会長 直箟 晋一先生 の3名
②松木、郡山薬剤師会 安藤尚廣先生、 奥羽大学薬学部 医療薬学分野 准教授 大原 宏司先生 の3名  

現地支援活動は、他の派遣チームとの協働による活動を展開した。 

①:派遣先隣接の珠洲市民病院薬剤部への人的支援業務(病院薬剤師も被災しており、疲弊や感染症により人員が不足していたため、私は病院経験者でもあったので、支援に2日間薬剤部の業務を行いました)が感染症臨時調剤所の継続運営させるための準備、DMATからの災害処方箋の応需(健康増進センター臨時調剤所)、日本赤十字社の救護チームの救護所からの災害処方箋の応需(すずなり救護所)、各避難所等へのラウンド、広島県薬剤師会のモバイルファーマシーの救護所での運用準備 等 

②:DMAT、JMAT、その他医療チーム等による災害処方箋の応需(健康増進センター臨時 調剤所)、日本赤十字社の救護チームとモバイルファーマシーの連携による災害処 方箋の応需(すずなり救護所)、各避難所等へのラウンド

です。

現地では、まだまだ電気すら復旧していない地域が多く、上下水道は壊滅状態で、派遣2回目の時では、循環式の手洗い装置、公衆トイレ(一般的な公衆トイレに加え、他県からの水洗トイレカーの配備)、そして自衛隊による風呂の設置が始まって、多少状況は良くなってはいましたが、上下水道の復旧の目途は5月とのことで、直下型地震の恐ろしさを目の当たりにしてきました。 

そこでラウンドでは、避難所が密で仕切りの無いような避難所の悪列な場所であることを鑑みた「環境衛生・環境アセスメント(手指衛生管理方法の指導・確認や、寒い時期でもあり、換気がつい控えがちとなるので、CO2測定結果からめた換気の重要性の啓発・確認)、消毒薬の配置・使用方法・確認」「健康相談ならびにOTC医薬品の配布および適正使用推進」「各地からの支援医薬品の整理」「災害処方医薬品の配送・説明・相談対応」等々、『被災者の薬物治療の継続から新たな処方薬への対応』『「環境衛生の維持向上を図る支援』等を行ってきました。 

被災者の方々からは、「医薬品が手元になくなりつつあり不安だったが、安心した。」「来てくれてありがとう。」「福島からきてくれたんですね。私たちの気持ちを分かってくれる方々が来てくれるとは心強いです。」などの声をいただき、泣いてくださる方もいました。 

また、能登半島における珠洲市と他の被災地の医療事情で最も異なる点としては、珠洲市内に保険薬局が一軒も存在しないこと(正確には、2023年の12月をもって、最後の1件が閉局となり、珠洲市内全ての医療機関が院内調剤となっていた)が挙げられます。そもため、急性期に必要な医薬品をはじめ、糖尿病や高血圧症など慢性疾患に必要な治療薬の備蓄が十分でなく、医薬品の供給、薬剤師の派遣、効率の良い医薬分業との連携が特に必要な地域となっていいたことです。こうした事情から、珠洲市内には2月一杯、広島県薬剤師会が所有するモバイルファーマシーが常駐し、日本赤十字社の救護チームとの連携による薬物療法の維持・継続を担っていくという状況で派遣を終えました。 

今後も、第3回目の派遣やJMATとの共同派遣等の要請があればいつでも参加する所存です。 

DMATによる災害処方箋の鑑査と調剤を行う松本(珠洲臨時調剤所内)
日本赤十字社救護チームによる災害処方箋と診療録の内容を確認する大原先生(すずなり救護所内)
臨時調剤所の入り口
臨時調剤所の様子
珠洲市内の様子1
珠洲市内の様子2
すずなり救護所(日本赤十字社救護チームとモバイルファーマシー)
トイレカー(兵庫県あわじ市からの支援)
悪路地への避難所へのラウンド
モージングショーで取材(左下:歯科診療者が合流!医歯薬の3師会が支援)